附属書Iの爬虫類を合法的に飼うには個体ごとの登録票が必須。登録票のない個体は密輸を疑い、附属書の格上げにも注意します。
【重要】本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。サイテス(ワシントン条約)の附属書区分は、締約国会議(CoP)のたびに改正される可能性があります。飼育・譲渡・繁殖を検討される際は、必ずCITES事務局データベース「Species+」または環境省の最新情報でご確認ください。
― 附属書I爬虫類との上手な付き合い方
中級以上の飼育者にとって、サイテス(ワシントン条約)附属書Iの知識は「知っていると得する豆知識」ではありません。「知らないと、自分の飼育や譲渡がうっかり違法になってしまう」――そんな必須の教養です。
ポイントはシンプルで、附属書Iの爬虫類を日本で合法的に飼育・譲渡・繁殖するには、個体ごとに交付される「国際希少野生動植物種登録票」がどうしても欠かせません。逆に言えば、この登録票が付いていない附属書I個体が売られていたら、まず密輸を疑うべきなんです。しかも「昨日まで附属書IIだった種が、ある日を境に附属書Iに格上げされる」――こういうことが、実際に何度も起きています。
このコラムでは、附属書Iってそもそも何?というところから、日本で飼われてきた附属書I爬虫類の一覧、登録票のしくみ、そして最近の格上げ事例までを、まとめて整理していきます。
目次
そもそもワシントン条約(CITES)附属書Iって何?
サイテス(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、いわゆるワシントン条約)は、1973年に採択された、野生動植物の国際取引を規制するための国際条約です。対象になった種は、絶滅リスクや取引の影響度に応じて、附属書I・II・IIIの3段階に分けられています。
- 附属書 I
-
いちばん規制が厳しい。商業目的の国際取引は原則禁止。
- 附属書 II
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「取引をちゃんと規制しないと絶滅の危険がある種」で、輸出国の許可があれば取引可能。
- 附属書 III
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特定の国が「自国の種を守りたい」と掲載を求めたもの、というイメージ。
飼育の現場で普段目にする種の多くは、実は附属書IIです。たとえばボールパイソンやグリーンイグアナ、たくさんのカメレオン、そして大半のボア・パイソン類は附属書II。正規の輸入手続きを経て流通しています。
附属書Iの爬虫類は、その中でも「取引が原則禁止された、いちばん上の希少種」という位置づけになります。まず押さえておきたい第一のポイントが、この『附属書I=原則、商業取引はダメ』という大原則です。
附属書Iの爬虫類を「合法的に」飼うということ
「附属書Iは取引禁止なら、日本で飼ってる個体って全部アウトなの?」――これ、すごくよくある誤解です。答えはNOです。
日本では、サイテスの附属書掲載種は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)で規制されます。附属書Iの種は「国際希少野生動植物種」に指定されて、原則として国内での譲渡・引渡し(有償でも無償でも、売買も譲り渡しもぜんぶ)が禁止されるんですね。
ただし、例外があります。サイテスの規制が効く前に適法に輸入された個体、そしてその個体から国内で繁殖させた個体については、1匿ずつ登録して「国際希少野生動植物種登録票」(登録票)を交付してもらえば、例外的に譲渡・売買・繁殖ができます。この登録の窓口になっているのが、一般財団法人自然環境研究センターです。
つまり、附属書Iの爬虫類を合法的に扱うカギは、この登録票にあります。もし登録票のない附属書I個体が売られていたら、それは密輸個体の疑いが濃い、ということ。中級以上飼育者だからこそ、個体を迎えるとき・手放すときには、登録票があるか、そして記載内容(種名・性別・特徴・マイクロチップ番号など)が合っているかを、必ず確認する癖をつけておきたいところです。
日本で飼育される(された)附属書I爬虫類リスト
ここからは、飼育の文脈で目にしやすい、あるいは昔よく流通していた附属書Iの爬虫類を、カメ類・トカゲ類・ヘビ類に分けて並べていきます。附属書の区分そのものは法的な事実なので、最新の正確な区分は、記事の最後で紹介する公的データベースで確認してくださいね。
カメ類(リクガメ・水棲ガメ)
| 和名 | 学名 | 備考 |
|---|---|---|
| ホウシャガメ | Astrochelys radiata | マダガスカル固有。飼育・繁殖ともに登録票が必須 |
| ヘサキリクガメ(アンゴノーカ) | Astrochelys yniphora | 世界最希少級のリクガメ |
| ビルマホシガメ | Geochelone platynota | ― |
| インドホシガメ | Geochelone elegans | 2019年のCoP18で附属書IIからIへ格上げ |
| エジプトリクガメ | Testudo kleinmanni | ― |
| クモノスガメ(キバラ/キタ/ミナミ) | Pyxis arachnoides | 2005年に附属書Iへ |
| ヒラオリクガメ | Pyxis planicauda | マダガスカル固有 |
| パンケーキガメ(ヒラセリクガメ) | Malacochersus tornieri | 2019年のCoP18で附属書IIからIへ格上げ |
| ホームセオレガメ | Kinixys homeana | 2025年のCoP20で附属書IIからIへ格上げ(最新) |
| インドセタカガメ | Geoclemys hamiltonii | 水棲。国内流通あり |

トカゲ・イグアナ類
| 和名 | 学名 | 備考 |
|---|---|---|
| シナワニトカゲ | Shinisaurus crocodilurus | 2019年のCoP18で附属書IIからIへ格上げ。国内流通実績あり |
| コモドオオトカゲ | Varanus komodoensis | 実質的に動物園のみ |
| 一部のオオトカゲ類 | Varanus bengalensis, V. flavescens, V. griseus ほか | ― |
| サイイグアナ属 | Cyclura spp. | ― |
| ガラパゴスリクイグアナ | Conolophus subcristatus | 2025年のCoP20で附属書IIからIへ格上げ(最新) |

ヘビ類
| 和名 | 学名 | 備考 |
|---|---|---|
| インドニシキヘビ | Python molurus(基亜種 molurus) | ― |
| アルゼンチンボア | Boa constrictor occidentalis | ― |
| デュメリルボア | Acrantophis dumerili | マダガスカル産 |
| マダガスカルグラウンドボア | Acrantophis madagascariensis | ― |
| マダガスカルツリーボア | Sanzinia madagascariensis | ― |
| ジャマイカボア | Chilabothrus subflavus | ― |

ちなみに、ボールパイソンやカーペットパイソンみたいに流通量の多いニシキヘビ・ボアの多くは附属書IIで、Iではありません。ここは混同しやすいので注意です。あと、ワニ類の多くも附属書Iに載っていますが、ペットとして飼う対象としては限られるので、今回は割愛しています。
「昨日まで附属書 II」が突然「附属書 I」になる
飼育者がいちばん気をつけたいのが、附属書の『格上げ』です。サイテスの附属書は、だいたい3年に一度のペースで開かれる締約国会議(CoP:Conference of the Parties)で改正されます。この場で、それまで附属書IIだった種が、附属書Iへ移行(アップリスト)されることがあるんです。
実例を挙げますね。2019年にスイス・ジュネーブで開かれたCoP18では、インドホシガメ、パンケーキガメ、シナワニトカゲなどが附属書IIからIへ格上げされました(出典:CITES CoP18会議結果/外務省)。どれも日本のペット市場で流通していた種なので、格上げで扱いがガラッと変わりました。
さらに2025年11月24日から12月5日にかけて、ウズベキスタン・サマルカンドで開かれたCoP20では、附属書改正で82分類群の動植物が新たに規制対象になるなどの変更が決まりました。爬虫類だと、ホームセオレガメが附属書IIからIへ、ガラパゴスリクイグアナも附属書IIからIへ移行。さらにハイチ・ドミニカ共和国固有のトカゲ、ハイチギャリワスプ(Caribicus warreni)が新たに附属書Iに載りました(出典:WWFジャパン「施行から50年、ワシントン条約その役割と日本の責任:CoP20を終えて」2026年/外務省「ワシントン条約第20回締約国会議(COP20)」)。
ここで大事なのが、附属書IIからIへ移った種は、すでに日本国内に輸入・流通している個体がいる、という点。格上げ前から適法に飼っていた個体や、その繁殖個体は、種の保存法にしたがって個体登録をすれば、そのまま飼育・譲渡を続けられます。だから「格上げされた瞬間に手持ちの子が違法になる」わけではありません。でも、登録の手続きをうっかり忘れると、その後の譲渡や繁殖が違法になってしまう。自分の飼っている種が次のCoPで格上げ候補に挙がっていないか、いつもアンテナを張っておく――これが飼育者の腕の見せどころだと思います。
飼育者に問われる「由来の合法性」
サイテスも種の保存法も、突きつめると「その個体がどこから来たのか(由来)」の合法性をきちんと担保するためのしくみです。
WWFジャパンとTRAFFICが2025年に公表した爬虫類9種の取引調査報告『問われる日本の責任』では、日本が世界の爬虫類取引でかなり大きな存在で、合法性や持続可能性があやしい個体がペットとして活発に取引されている、という実態が指摘されています。この報告は、オンライン調査(2025年3月、41ウェブサイト)や実地調査(ナゴヤレプタイズワールド、2025年3月29日、90業者以上)にもとづいたものです(出典:WWFジャパン「問われる日本の責任」プレスリリース、2025年7月24日)。
それから、飼育下繁殖(CB)個体をめぐっては、野生捕獲の個体を「繁殖個体です」と偽って取引するケースが国際的に問題視されていて、CoP20でも飼育下繁殖の追跡・管理データベースをつくる検討などが決まりました(出典:WWFジャパン、前掲)。
じゃあ飼育者に何ができるか。ここは意外とシンプルです。個体を迎えるときに、登録票・輸入の経緯・繁殖の記録を確認すること。出どころのわからない附属書I個体には手を出さないこと。そして、自分が繁殖させた個体を手放すときは、きちんと登録して、次の飼い主さんに由来の情報をちゃんと引き継ぐこと。この一つひとつの積み重ねが、趣味としての爬虫類飼育を、これから先も守っていくことにつながります。
最後に
附属書Iの爬虫類は、原則として商業取引が禁止された、いちばん上の希少種です。日本で合法的に飼育・譲渡・繁殖するには、個体ごとの登録票が欠かせません。登録票のない個体は、まず密輸を疑ってください。そして附属書は生き物みたいに変わっていくもので、昨日までII類だった種が、今日からI類になることもあります。
飼育者に求められるのは、種名や飼育テクニックの知識だけじゃなくて、「この子がどこから来たのか、ちゃんと説明できる」という一段上の責任感なんだと思います。正確で最新の附属書区分は、面倒でも必ず公的な情報源で確認する――そこだけは、ぜひ習慣にしてくださいね。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。最新の附属書区分はSpecies+または環境省の公式ページでご確認ください。
用語解説とよくある質問
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引を規制する国際条約です。1973年に採択され、日本では通称ワシントン条約と呼ばれます。
Iは商業目的の国際取引が原則禁止される、いちばん厳しい区分です。IIは輸出国の許可があれば取引可能。IIIは特定国が自国種の保護のために掲載を求めた区分です。
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の略称です。国内で希少野生動植物種を保護する日本の法律で、サイテス附属書掲載種の国内規制の根拠になります。
種の保存法に基づき、サイテス附属書Iの掲載種などを国内で規制対象として指定した区分です。指定種の譲渡には登録が必要になります。
附属書I個体などを国内で適法に譲渡・繁殖するために、個体ごとに交付される証明書です。一般財団法人自然環境研究センターが登録事務を担います。
Conference of the Parties の略です。サイテスの締約国が集まり、附属書の改正などを審議する会議です。おおむね3年に一度開かれます。
ある種の掲載区分が、より規制の厳しい附属書へ移行することです。附属書IIからIへの移行が代表例です。
Captive Breeding の略です。飼育下で繁殖させた個体を指します。野生捕獲(WC=Wild Caught)個体と対比されます。
参考資料
- CITES事務局データベース Species+(学名で附属書区分を検索可能)
https://speciesplus.net - 環境省「国際希少野生動植物種一覧」
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogosys/list.html - 経済産業省「ワシントン条約規制対象種の調べ方」
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/washington.html - 一般財団法人自然環境研究センター(国際希少種登録)
https://www.jwrc.or.jp/service/cites/index.html - 外務省「ワシントン条約第18回締約国会議(COP18)」結果
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/washi_1.html - 外務省「ワシントン条約第20回締約国会議(COP20)」結果
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/washi_1.html - WWFジャパン「施行から50年、ワシントン条約その役割と日本の責任:CoP20を終えて」(2026年)
https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/6173.html - WWFジャパン「問われる日本の責任:CITES CoP20を前に9種の爬虫類取引調査から見えてきたこと」(2025年)
https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/6129.html