東大教授コラム

フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)とは|大学教授が解説する生態と日本での位置づけ

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フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)とは|大学教授が解説する生態と日本での位置づけ
この記事の結論

フタホシコオロギはアフリカ・南アジア原産の大型種。日本では野外定着しにくく、研究と飼育の両面で重要な昆虫です。

鳴き声で秋を彩るコオロギの仲間の中で、ひときわ大きな存在感を放つ「コオロギ」。本記事では、東京大学永田教授の解説をもとに、分類・形態・生態・日本での生息状況・研究での役割までを、月夜野ファーム代表の南波がご案内します。爬虫類や両生類の飼育者の方はもちろん、コオロギそのものに興味を持たれた方にもおすすめの一読コラムです。

フタホシコオロギとは — 分類と文化的位置づけ

フタホシコオロギ成虫(♀)

フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)は、バッタ目(直翅目:Orthoptera)のうちキリギリス亜目(Ensifera)に属する代表的なコオロギです。直翅目はキリギリス亜目とバッタ亜目の大きくふたつの系統に分かれているのですが、一般的に「コオロギ」と呼ばれる仲間はキリギリス亜目に含まれます。この亜目にはコオロギ上科(Grylloidea)、ケラ上科(Gryllotalpoidea)、キリギリス上科(Tettigonioidea)などが含まれていて、コオロギ科(Gryllidae)はクモコオロギ科(Phalangopsidae)やヒバリモドキ科(Trigonidiidae)と近い仲間です。ちなみに、世界のバッタ目の昆虫は約3万種が記載種として登録されていて、コオロギはそのうち4,000種いると考えられています。

このように、コオロギは私たち人間社会の文化的にも重要な昆虫です。日本では古くから秋の風物詩として鳴き声を愛でる文化があり、俳句・随筆・古典文学にも頻繁に登場します。コオロギの鳴き声は「虫の音」として季節感を象徴し、人々の情緒と深く結びついてきました。また、フランスの博物学者ファーブルも『昆虫記』の中でコオロギの行動や鳴き声を詳細に記録しています。つまり、コオロギは科学と文学の双方で重要な位置を占めていることになります。特に、近年では昆虫食の対象となっているフタホシコオロギは、巷では特に有名になりました。

形態と生態 — 大型コオロギの特徴

フタホシコオロギは、成虫の翅の付け根にある二つの白い斑(はん)が特徴で、これが和名の由来となっています。成虫の体長は 25〜30mm ほどの大型コオロギです。雄の成虫は翅をこすり合わせて鳴き声を発することが特徴的です。一方、鳴かない雌は長い産卵管を持っていて、土に産卵管を挿して土の中に産卵します。卵から孵化してから成長に伴い数回の脱皮を行って成虫に至ります。通常、幼虫は孵化してから 6〜8週間程度で成虫 になります。

生態的には、フタホシコオロギはアフリカ・南アジアの亜熱帯を中心に広く分布し、乾燥した草原や農地周辺に多く見られる、とされています。食性は、なんでも餌にする 雑食性 で、植物性の餌も動物性の餌もともに摂取し、小型昆虫を捕食します。また、成長過程で共食いもします。

南波

鳴き声の大きさは、室内で飼育する際に意識しておきたいポイントのひとつです。雌雄の見分け方も、産卵管の有無で比較的わかりやすいので、ぜひ観察してみてください。

日本における生息状況

日本における生息状況として、九州や本州でみつかるフタホシコオロギは本来の在来種ではなく、主にペット用飼料として輸入されてきた 外来種 です。

屋内飼育から逃げ出した個体が都市部で確認されることはあるようですが、本州以北では野外定着が確認された例はほとんどありません。それは、冬季の低温に弱く、温暖な地域でも越冬が難しいため、在来環境において長期的に定着できないと考えられています。ただし、沖縄県では野生種が見られますが、それが土着の種かどうかは分かっていません。

研究と文化におけるフタホシコオロギ

フタホシコオロギは研究利用の面でも歴史的に重要であり、神経生理学・行動学・発生生物学のモデル生物として広く用いられています。鳴き声の生成機構、音響コミュニケーション、求愛行動の神経基盤、脚の再生能力、ホルモン制御など、多様な研究分野で中心的役割を果たしています。ちなみに、飼育が容易で繁殖力が高いことから、ヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)もフタホシコオロギに並び、世界で利用されるコオロギの一つです。

このように、フタホシコオロギは、文化・研究の両面で高い価値を持つ種であり、バッタ目の進化や行動を理解するために重要な昆虫種で、各分野で大きく貢献しています。

月夜野ファームより一言

月夜野ファームでは、爬虫類・両生類の飼育者の皆さまへ向けて、フタホシコオロギを長年お届けしています。教授の解説にもあるように、フタホシコオロギは文化的にも研究的にも奥深い昆虫です。日々の給餌のなかで「ただの餌」としてではなく、その背景にある生態や歴史に少しでも興味を持っていただけたら、私たちとしても大変嬉しく思います。

次回以降のコラムでは、コオロギの雌雄差について教授の監修のもと取り上げていく予定です。

参考資料

ファーブル『昆虫記』

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著者

南波 竜政(なんば りゅうせい)

NAMBA RYUSEI

株式会社月夜野ファーム 代表取締役

東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了後、大手都市銀行に入行。法人営業や事業支援に従事。2024年に株式会社月夜野ファームの代表取締役に就任。社内体制の改革やEC事業の拡大、新商品開発に取り組む。動物園・大学・研究機関との連携にも力を入れ、研究開発とマーケティングを融合した経営を実践中。生命への敬意と愛情を大切に、新たな価値を生み出し、持続可能な事業づくりを目指す。

監修

永田 晋治 教授(ながた しんじ)

NAGATA SHINJI

東京大学 大学院新領域創成科学研究科 分子認識化学研究室 教授

本コラムでは、コオロギの栄養価・良い餌昆虫の条件・冷凍加工の影響について、科学的な事実の部分を監修しています。