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イエコオロギとフタホシコオロギの違い 使い分け・栄養比較【月夜野ファーム】

公開日

イエコオロギとフタホシコオロギの違い 使い分け・栄養比較【月夜野ファーム】
この記事の結論

イエコとフタホシは優劣でなく使い分けが正解。
脂質はフタホシが約1.5倍で、幼体にはイエコ、食欲を出したい成体にはフタホシが向きます。

コオロギを扱う仕事をしていると、お客様からよく聞かれる質問があります。

「イエコとフタホシ、どっちがいいんですか?」

シンプルな問いですが、これが案外奥深い。私自身、長年コオロギと向き合ってきた中で「一概にどちらが上」とは言えないと感じています。どちらにも得意なことがあり、不得意なこともある。大切なのは、それぞれの特性を知ったうえで、飼っている生き物に合わせて選ぶことだと思っています。

このコラムでは、そんな「使い分け」のヒントをお伝えできればと思います。今回は弊社で実際に計測した栄養データも初公開しますので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも2種類のコオロギは何が違うのか

ペットショップやオンラインショップでよく見かけるコオロギは、大きく分けて2種類です。

ひとつは「イエコオロギ(Acheta domesticus)」。淡い褐色で細身、動きが比較的おとなしく、「コロコロ」と澄んだ声で鳴きます。

もうひとつが「フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)」。黒褐色でがっしりとした体つきで、前胸に2つの白い斑点があることが名前の由来です。イエコに比べてひと回り大きく、動きも活発。鳴き声も大きくて存在感があります。

この2種、同じ「コオロギ」という括りですが、生物学的には属レベルで異なる別の生き物です。見た目だけでなく、性格や体の作りもかなり違う。だから「どちらを選ぶか」が、思った以上に飼育結果に影響することがあるんです。

月夜野ファーム計測データで見る栄養成分の違い

「イエコとフタホシ、栄養的にはどう違うの?」という疑問に答えるため、弊社では活コオロギの栄養成分を独自に計測しました。以下が、その結果です。

栄養成分(100gあたり)フタホシコオロギ (活:約200匹)イエコオロギ (活:約250匹)
エネルギー163 kcal135 kcal
タンパク質16.0 g16.9 g
脂質9.8 g6.5 g
炭水化物2.8 g2.1 g
灰分1.4 g1.4 g
カルシウム47 mg45 mg

(月夜野ファーム調べ 活コオロギ100gあたりの栄養成分)

タンパク質はほぼ同等(イエコ16.9g・フタホシ16.0g)

このデータを見て、意外に思われた方もいるかもしれません。

実は、タンパク質についてはイエコオロギのほうがわずかに多い結果になりました(イエコ16.9g・フタホシ16.0g)。「フタホシコオロギのほうが栄養が高い」というイメージをお持ちの方もいますが、少なくともタンパク質に限れば、大きな差はないというのが弊社の計測結果です。

脂質は約1.5倍の差(フタホシ9.8g・イエコ6.5g)

一方で差が出たのが脂質です。フタホシは9.8gに対し、イエコは6.5gと、フタホシコオロギの方が脂質が約1.5倍多い数字になっています。エネルギー量にもその差が反映されており、フタホシ163kcalに対しイエコは135kcalとなっています。

カルシウムはどちらも100gあたり45〜47mgとほぼ同等です。ただし、後述するように、コオロギ全般にカルシウムは少ない傾向があるため、給餌時の工夫が必要になります。

脂質の多さは「カロリー源」として考える

フタホシの脂質が多いことは、一概に悪いわけではありません。産卵後の体力回復期や、冬場で代謝が落ちている時期には、エネルギー密度の高いフタホシが向いているケースもあります。

一方、もともと肥満傾向のある個体や、運動量が少ない個体に与える場合は、脂質の低いイエコを選ぶほうが無難でしょう。同じコオロギでも、個体の状態に合わせて使い分けることで、より丁寧な栄養管理ができます。

カルシウムはどちらも不足気味

どちらのコオロギも、カルシウムはそれほど多くありません。爬虫類、特にトカゲ類はカルシウム不足が骨の発育に影響することがあるため、コオロギをそのまま与えるだけでは十分とは言えない場合があります。

対策として有効なのが次の2つです。

  • ダスティング:給餌直前にコオロギにカルシウム剤をまぶす
  • ガットローディング:給餌前日〜当日にコオロギに小松菜やにんじん、カボチャなどを食べさせておく

コオロギを「栄養の器」として活用する意識を持つと、給餌の質がぐっと上がります。

体の作りと消化のしやすさ

栄養成分と並んで大切なのが、消化のしやすさです。

フタホシコオロギは外骨格(体の表面を覆う硬い部分)が厚くてしっかりしています。一方、イエコオロギの外骨格は比較的薄くて柔らかい。この差が、食べた後の消化負担に影響します。

特に体が小さかったり、まだ成長途中だったりする幼体の個体には、消化しやすい餌を選ぶことが大切です。目安として覚えておくと便利なのが、

  • 幼体・小型の個体 → イエコオロギ(消化しやすい)
  • 成体・大型の個体 → フタホシコオロギ(栄養密度を活かす)

という使い分けです。もちろん例外もありますが、迷ったときの基準として役立ててください。

食いつき・嗜好性の違い

爬虫類を飼っていると、一度は悩む「拒食」の問題。実はコオロギの種類を変えるだけで解決することもあります。

フタホシコオロギは動きが活発で、ぴょんぴょんと跳ね回ります。この動きが視覚的な刺激となり、フトアゴヒゲトカゲやモニター類など、動くものに反応して捕食する爬虫類の食欲を引き出しやすいです。「ケージにコオロギを入れた瞬間、目をキラッとさせて飛びかかった」という経験がある方は、フタホシとの相性が良かったのかもしれません。

一方、イエコオロギは動きが穏やかで、ゆっくり歩き回る感じです。臆病な個体や、まだ環境に慣れていない個体にとっては、激しすぎる動きがストレスになることもあるため、そういうときはイエコのほうが馴染みやすい場合があります。

「イエコには無反応なのに、フタホシに変えたら急に食べた」「フタホシの動きに怯えてしまうのでイエコに戻した」という声はお客様からもよく聞きます。種類を変えてみるというのは、意外とシンプルで有効なアプローチです。

餌の話だけでなく、飼育者側の「管理のしやすさ」についても正直にお伝えします。

全滅のリスク

イエコオロギは環境の変化に少し敏感で、過密・湿気・通気不足などの条件が重なると、一気に大量死することがあります。購入後すぐに通気のよい容器に移すこと、水分補給は野菜などの固形物で行うこと、密度を上げすぎないことがポイントです。

フタホシコオロギは比較的タフで、多少の環境変化には動じません。在庫を安定させやすいのはフタホシの強みです。

臭いの違い

フタホシコオロギは、アンモニア臭が強いです。飼育容器の清潔を保つことが大切で、集合住宅などで飼育する場合は換気に気をつけてください。イエコは比較的臭いが少なく、においを気にする方にはこちらが向いています。ただ生育環境が匂いに大きく影響するため一概には言えません。

攻撃性と給餌後の回収

フタホシは気性が荒く、爬虫類のケージに入れたまま放置すると逆に生体を噛んでしまうことがあります。給餌後は残ったコオロギを回収することを習慣にしてください。イエコはおとなしいので、その点は安心感があります。

ひと目でわかる比較表

ここまでの内容を表にまとめました。弊社の栄養データも反映しています。

比較項目イエコオロギフタホシコオロギ
外骨格の硬さ柔らかい(消化しやすい)硬い(消化に時間がかかる)
タンパク質16.9g(やや多め)16.0g
脂質6.5g(低め)9.8g(高め)
カルシウム45mg47mg
食いつきへの影響穏やか・臆病な個体向き活発・食欲刺激に向く
攻撃性おとなしい気性が荒め
向いている対象幼体・小型・臆病な個体成体・大型・食欲を出したい個体

(栄養成分は月夜野ファーム調べ 活コオロギ100gあたり)

種類ごとのざっくりおすすめ

よく飼われている爬虫類に当てはめると、こんなイメージになります。

イエコオロギが向いている爬虫類・両生類

レオパードゲッコー(ヒョウモントカゲモドキ)の幼体、小型のヤモリ類、カメレオンの幼体、拒食中や体調が不安定な個体。脂質が低めで消化しやすいので、体に負担をかけたくない場面全般に向いています。

フタホシコオロギが向いている爬虫類・両生類

フトアゴヒゲトカゲの成体、モニター類、大型のヤモリ、食欲が落ちていてスイッチを入れたい個体。エネルギー量が高めなので、産卵後の体力回復期にも重宝します。

もちろん、これはあくまで目安です。同じ種類でも個体によって好みが違うのが生き物の面白いところ。「うちの子」の様子を見ながら、柔軟に調整してみてください。

「どちらか一方」より「両方をうまく使う」

最後にひとつ、私が長年コオロギと向き合ってきて感じていることをお伝えします。

「イエコかフタホシか」という問いへの私なりの答えは、「どちらか一方に絞らなくていい」です。

同じ餌を与え続けることは、栄養の偏りを生むことがあります。今回ご紹介したデータを見ても、タンパク質はほぼ同等でも、脂質やエネルギー量には差があります。それぞれの特性を活かして、状況に応じてローテーションするのがおすすめです。

たとえば、

  • 幼体期はイエコ中心で、成体になったらフタホシも取り入れる
  • 普段はイエコを使いつつ、食欲が落ちたときにフタホシに切り替える
  • 産卵後の体力回復期はフタホシを多めに与える

こんな使い方が、飼育者さんの間でも実践されています。

コオロギはシンプルな餌のように見えて、選び方・与え方次第で飼育の質がかなり変わります。今回初公開した弊社の栄養データが、日々の給餌を見直すきっかけになれば嬉しいです。

よくある質問

Acheta属・Gryllus属とは?

コオロギを生物学的に分類するときの「属」の名称です。イエコオロギはAcheta属、フタホシコオロギはGryllus属に分類され、同じコオロギ科でも異なる属に属する別の生き物です。

外骨格とは?

昆虫の体の表面を覆う硬い殻のような部分のことです。コオロギの場合、この外骨格の厚みや硬さが、爬虫類が食べたときの消化のしやすさに影響します。

ダスティングとは?

コオロギなどの餌昆虫に、カルシウム剤などのサプリメントの粉をまぶして与える方法です。給餌の直前に行うのが一般的で、爬虫類のカルシウム不足を補う目的で行います。

ガットローディングとは?

コオロギに栄養価の高い野菜(小松菜・にんじん・カボチャなど)を食べさせておき、コオロギのお腹を通じて爬虫類に栄養を届ける方法です。給餌の前日〜当日に行います。

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著者

南波 竜政(なんば りゅうせい)

NAMBA RYUSEI

株式会社月夜野ファーム 代表取締役

東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了後、大手都市銀行に入行。法人営業や事業支援に従事。2024年に株式会社月夜野ファームの代表取締役に就任。社内体制の改革やEC事業の拡大、新商品開発に取り組む。動物園・大学・研究機関との連携にも力を入れ、研究開発とマーケティングを融合した経営を実践中。生命への敬意と愛情を大切に、新たな価値を生み出し、持続可能な事業づくりを目指す。